癜りサギ

癜りサギを远う者ぞ

穎に萜ちた、CGクリ゚むタヌの物語

序文

存圚しないものを、存圚するかのように芋せる。 架空の䞖界を映像に仕立お、芋る人の目を本気で隙す——そういう仕事を、䞉十幎続けおきた。

CGのプロがなぜ陰謀論にはたるのか——その理由の䞀぀がバむアス盲点です。「他の人の勘違いはよく芋えるけど、自分の勘違いには気づきにくい」ずいう心理です。「自分はよくわかっおいる」ずいう自信が、逆に目を曇らせおしたうこずがありたす。

俺は、名叀屋でフリヌランスのCGクリ゚むタヌをやっおいる。䌁画からたで、党郚䞀人でやる。、、アニメヌション、、、——それを党郚、䞀人の人間がやりきる。分業化が進んだ東京の倧きな制䜜䌚瀟ずは違い、そういう仕事が名叀屋には倚い。芏暡でこそ小さいかもしれない。でも、1人でプラモデルを組み䞊げるように、隅々たで気を䜿い映像を仕䞊げおいくプロセスが、ずっず奜きだ。

だけど、そのバランスが、ある時期を境に厩れおいった。

気が぀けば、俺はに萜ちおいた。

今から話すのは、その穎の話だ。萜ちおいく話ず、這い䞊がる話。そしお——這い䞊がるヒントが、穎の䞭にあったずいう、少し奇劙な話だ。

陰謀論を信じた人を「だたされやすいだけ」ず思いがちです。でも研究では、孊歎や賢さよりも「䞍安・先が芋えない・どうにもできない」ずいう気持ちの方が、信じやすさに匷く関係するずわかっおいたす。条件が重なれば、誰でもその入口に立ちえたす。

を远いかけたこずがあるなら、この話は他人事ではないはずだ。

第䞀章 静かな、冷たい感芚

ある朝、クラむアントからメッセヌゞが届いた。

「先日お芋積もりいただいたCG制䜜の件ですが、AIでお安く制䜜しおいただくこずは可胜でしょうか。コストを抑えたくお  」

俺はしばらく、その文章を画面の前で読み返す。

怒りではない。もっず静かな、冷たい感芚だ。予感が珟実になった瞬間の、あの感じ。

そのクラむアントずは五幎の付き合いになる。毎幎の展瀺䌚映像を担圓しおいる。から仕䞊げたで二ヶ月かけお䜜る、俺にずっおは手応えのある仕事だ。

「怜蚎したす」ず返信しお、怅子の背もたれに身䜓を預けた。倩井を芋䞊げる。

「自分の仕事がなくなるかもしれない」——その恐怖は、心の奥深くを揺さぶりたす。心理孊の恐怖管理理論によるず、自分の存圚が脅かされたずき、人は「確実な答えをくれるもの」に匕き぀けられやすくなりたす。䞍安が倧きいほど、「答えをくれるコンテンツ」の魅力が増したす。

のを、俺は誰よりも早く感じ取っおいた。

OpenAIが公開したを芋た倜のこずを芚えおいる。サングラスを身に付けた赀い口玅のスタむリッシュな女性。光の滲み、砂浜を走る犬。毛䞊みの質感——俺が䜕癟時間もかけお積み䞊げおきた技術が、䞀行のテキストから出おきた。

感心するず同時に、脱力感に苛たれる。

俺のこの30幎が無䟡倀だった様に思えおくる。

AIが真っ先に奪うのは䞭䟡栌垯の仕事だず盎感する。

俺がやっおきた仕事——地方CM、䌁業の商品映像、むベントのプロモヌション、ショヌルヌムの玹介CG——こういう仕事の倚くは、クラむアントの最初の問いが「いくらかかりたすか」だ。品質より予算。玍期より䟡栌。そしおAIは、その予算をれロに近づける。

「AIに仕事を奪われるなら、指瀺を出す偎に回ればいい」ず蚀う人がいた。ディレクタヌをやればいい、ず。

でも俺は——手を動かすこずが奜きなのだ。

ラむトの角床を䞀床ず぀動かし、矎しいを探す。単䜍で調敎し気持ち良い動きにこだわる。思い通りにいかない時間が長い。それでも、自分の手で磚いた分だけ、映像がどんどん良くなっおいく。その党郚が、奜きだ。

AIぞの指瀺を出すだけの仕事に、俺は魅力を感じられない。それは俺の「奜き」の栞心を倖したずころにある仕事だからだ。

「CGクリ゚むタヌであるこず」が自分らしさず結び぀いおいる人にずっお、「その仕事がなくなるかも」はただの職業の話ではありたせん。「自分は䜕者か」ずいう感芚が揺らぐこずをアむデンティティ危機ず蚀いたす。仕事ず自分が匷く぀ながっおいる人ほど、この揺らぎを匷く感じやすいのです。

その「奜き」が今、足元から厩れようずしおいる。

倜の眠りが、浅くなっおいる。

第二章 座れない

そんなある朝、起き䞊がろうずしお、腰に電流が走った。

激痛で、そのたた動けなくなる。䜕が起きたのかわからなかった。

やっずの思いで敎圢倖科にたどり着いた。それなのに。

医垫はレントゲン写真だけを芋おスタッフぞ蚀う。

「。痛み止め、湿垃」

俺の方は䞀床も芋ない。

「あの、仕事が——」そう蚀いかけた俺の声を遮るようにカルテを閉じお蚀った。

「はい、次の方」

蚺察台から降りようずしお、腰に激痛が走る。もた぀く俺に、医垫の小さな舌打ちが聞こえた。蚺察は五分だった。

病気や仕事の䞍安など「自分にはどうにもできない」ず感じる状況に眮かれるず、人は「意味や答え」を倖に求めやすくなりたす——これをコントロヌル喪倱ず蚀いたす。「なぜこうなったのか教えおくれるもの」に、ぐっず匕き぀けられやすくなりたす。

そこから玄䞀ヶ月、ほずんど立おなかった。痛み止めを倍飲む。胃が焌ける。トむレに間に合わない。深倜、掗面台で自分の䞋着を掗う。四十代半ばの男が、䜕をやっおいるんだろう。

敎圢倖科を転々ずする。牜匕。電気治療。良くなっおいるのか分からない。座れず仕事にならない。

クラむアントからメヌルが届く。「お身䜓のこずもありたすし、今回は別の方にお声がけさせおいただきたした。たた機䌚があれば」。䞁寧な蚀葉の奥に、今埌は無い、ずいう本音を感じる。

ずっず、頑匵っおきた぀もりだった。なのに、なぜ。

「ヘルニア 根本治療」「怎間板 自然治癒」——そんなワヌドで倜な倜な怜玢するうちに、、波動療法、気功  怪しいず思っおいたものばかりが䞊ぶ。「手をかざすだけで痛みが消える」なんお、笑い飛ばす偎にいた。でも、遞択肢がなくなるず人間は倉わる。比范的根拠のありそうなに目が止たり、そのたた予玄した。

痛みが続くず、「根拠を確かめおから」より「ずにかく効きそう」ずいう盎感で動きやすくなりたす。぀らい状況ほど、論理的な刀断より感情的な刀断が先に来るのです。陰謀論コンテンツの倚くは、その「盎感」にうたく届くように䜜られおいたす。

鍌灞院での斜術は、今たでずは䜕もかも違った。先生は䞀時間かけお問蚺し、「どこが痛いか」だけでなく「䜕にストレスを感じおいるか」「倜は眠れおいるか」たで、䞁寧に聞いおくれる。

「぀らかったですね。薬なんかじゃ、治らないんですよ」

斜術の途䞭、先生がぜ぀りず蚀った。それだけのこずで、䜕かが緩んだ。

数回通ったある日、埅合宀の本棚に積たれた雑誌の䞭に、䞀冊だけ背を立おたハヌドカバヌが目に入った。衚玙に、癜いりサギが描かれおいる。劙に気になり、手を䌞ばす。

「西掋医孊の䞍郜合な真実」

文脈効果——同じ話でも「どこで聞くか」で受け取り方が倉わりたす。代替医療の院で「西掋医孊は信甚できない」ず聞くず、病院で同じ話を聞くより自然に「そうなのか」ず入っおきたす。堎所や空気が、情報の信じやすさを倉えおしたうのです。

第䞉章 点が繋がっおいく

本には、の話が曞かれおいた。

特定の政治家ず補薬䌚瀟の癒着。実名入りの告発。——耇数の薬を同時に凊方するこずで副䜜甚が増え、さらに薬が増えおいく構造。読んでいお「これは知らなかった」ず思う蚘述がいく぀かある。

怜玢するず、匕甚されおいる論文や報道蚘事の倚くは、実際に存圚する。䞀郚は倧手メディアでも報じられおいる。

「これは、ちゃんずした批刀だ」ず思う。「陰謀論」ではなく、「業界ぞの正圓な問題提起」だず。

陰謀論によくある流れがありたす。最初は「確かにそうだ」ず思える事実から入り、少しず぀「怪しい䞻匵」ぞ匕き蟌む——これをゲヌトりェむ効果ず蚀いたす。最初に「この人は本物だ」ず感じるず、ハロヌ効果が働いお「この人の蚀うこずはきっず正しい」ず思い蟌みやすくなり、その埌の䞻匵をあたり疑わなくなりたす。

本の巻末に参考URLがあった。なんずなく、その䞀぀を開いた。

最初は医療系の批刀的コンテンツだ。ペヌゞを進めるず、「」なんお動画も出おくる。最初は「さすがにこれは 」ず思いながら芋る。でも語り口が萜ち着いおいお、論文らしきものが匕甚されおいお、「すべおが嘘ずは蚀い切れない郚分」がある。

は静かに、しかし確実に俺を動かしおいった。

次の動画。たた次の動画。

「医療利暩の背埌にいる者たち」。「」。「」——。

クリック。クリック。クリック。

。。。。。。。

ツナガル。ツナガル。ツナガル。

。。。。。。。——。

バラバラだったピヌスが、䞀぀の絵に収たっおいく。

氣持ちいい。こんな感芚は久しぶりだ。

氣が぀くず窓の倖が明るくなっおいた。

ああ、俺はいた、党おを理解した。

人の脳は、バラバラな出来事の䞭に「぀ながり」を芋぀けようずしたす。これはもずもず生き延びるために倧切な胜力です。でもその副䜜甚ずしお、぀ながっおいないものにも「関係がある」ず感じおしたうこずがありたす——これをアポフェニアず蚀いたす。「党郚぀ながっおいた」ずいうスッキリ感は、この脳の癖からきおいたす。頭のよさずは関係なく、誰にでも起きたす。

第四章 俺ず、同じだ

真実に氣づいた俺には、䞖界の芋え方さえ倉わった。

を぀けるず、ニュヌスキャスタヌが「たた嘘を぀いおいる」。補薬䌚瀟のCMが流れるず、「これが利暩の構造だ」ず思う。

やがお、ニュヌスを芋るずむラむラするようになる。「これは嘘だ」「これは誘導だ」——。

ク゜オヌルドメディア。マスゎミ。

確蚌バむアス——「やっぱり怪しい」ず思い始めるず、蚌拠が出れば「ほら芋ろ」、出なくおも「うたく隠しおる蚌拠だ」ず解釈できたす。どちらに転んでも信念が匷たるのです。さらに「信頌できる情報」をグルヌプ内だけに絞るず、反論が届かなくなりたす——これを゚コヌチェンバヌやたびこ郚屋ず蚀いたす。䞭にいるず、閉じた空間だずは気づきたせん。

䞉週間埌、のグルヌプに入る。

登録者六千人。グルヌプの名はず蚀った。毎朝、誰かが情報を流す。ワクチンのロット番号ず副反応のデヌタ。ず人口削枛蚈画。「グロヌバリストぞの抵抗」。「日本の䞻暩を取り戻す」。の挔説の切り抜き。

内容は危機感を煜るものが倚い。「これが真実なんですよ」「このたたじゃ危ないっお蚀っおるじゃないですか」——そういう熱量の投皿が流れおくる。

それだけなら俺はもっず冷めおいたかもしれない。

だけどグルヌプの参加者はずおも理知的で穏やかだ。医療職、研究者、䌚瀟圹員、子育お䞭の芪たち。
「他人に蚀われお来たわけじゃない。䜕かがおかしいず氣づいお、自ら調べおここに来た」ず口をそろえる。

怜玢で䜕が出おくるかは、アルゎリズムが決めおいたす。自分で調べおいる぀もりでも、実は「芋せたい情報だけが出おくる道」を歩かされおいたす——これをフィルタヌバブル泡の䞭ず蚀いたす。しかも「人に教わった」より「自分で気づいた」情報の方が、ずっず匷く信じ蟌みやすいずわかっおいたす。

俺ず、同じだ。

内集団バむアス——「自分ず同じ境遇の人」の蚀葉は信じやすくなりたす。たた「みんながそう蚀っおいる」だけで正しく感じられる——これを瀟䌚的蚌明ず蚀いたす。コミュニティに入るず、情報よりも先に「仲間がいる」ずいう安心感が来るのです。

䞀日の情報源は、TelegramずYouTubeになった。

。。。——。

最初の「そんな話が 」ずいう感芚は、い぀の間にか消えおいた。䜕床も語られるうちに、「そういうものがあるらしい」がデフォルトになる。

グルヌプの䞭は、居心地がいい。孀独じゃない。「わかる人間」がいる。

AIに仕事を脅かされたこずも、身䜓が壊れおいるこずも、「背埌に同じ敵がいる」ずいう文脈で語るず、スッキリする。珟実の䌚話より、グルヌプの䞭のチャットの方がずっずリアルに感じる。

「党郚あい぀のせいだ」ずたずめられるず、なぜかスッキリしたす——これを単䞀原因垰属バむアスず蚀いたす。仕事の䞍安も䜓の痛みも、バラバラな悩みが「䞀぀の敵のせい」になるず「戊う盞手が芋えた」ずいう感芚が生たれたす。脳はこのシンプルな説明をずおも奜みたす。

友人から「最近どうした、倧䞈倫か」ずLINEが来た。

眠っおる偎の矊たち。情匱め。

゚ピステミック優越感——「自分だけが真実を知っおいる。他の人はただ気づいおいない」ずいう気持ちが生たれたす。するず、反論されおも「あの人はただ目芚めおいないから」ず自動的に跳ね返せるようになりたす。これが「どんな蚌拠も通甚しない」状態を䜜りたす。

既読のたた、返信はしなかった。

俺は、お前たちずは違う。

俺は、お前たちずは違う。

第五章 ひびが入る

「拡散垌望」

ある倜、グルヌプに動画が投皿された。

「政府関係者が非公開の䌚議で本圓のこずを話しおいる」——そういう説明が぀いおいた。再生数はすでに数十䞇を超えおいた。「぀いに出た」「これで党郚぀ながった」ずいう声がグルヌプに溢れおいた。

俺は、興奮しながら再生を抌す。

もはや䜓が新しいピヌスを求めおいた。


でも䞉十秒あたりで、手が止たった。


この違和感は䜕だ 

にも䌌たこの違和感を、仕事で䜕床も味わった芚えがある。

郚屋の奥の壁、窓から差し蟌む光が圓たっおいる。光は右から来おいる。なのにマむクを握る男の顔には、巊偎からの光が圓たっおいる。

もう䞀床、最初から芋た。今床はプロずしお芋た。

髪の毛の際が、。の方向が、カメラの動きず合っおいない。人物の奥行き感ず背景の奥行き感が、同じ空間のものじゃない。

党郚、合成の痕だ。

䞉十幎やっおいれば、分かる。俺が毎日䜿っおいる技術だ。

誰かが——俺ず同じ仕事をしおいる人間が——これを䜜った。

しばらく、画面を芋぀めたたた動けなかった。

最初のひびはそこから来た。䞀぀疑い始めるず、止たらなくなる。

だずすれば、他のデヌタはどうだ。

「ワクチンのロット番号別の死亡率が隠蔜されおいる」ずいう投皿がシェアされおいた。映像ず同じだ——䞀次゜ヌスを確認すればいい。

厚劎省のサむトを調べる。

デヌタは存圚した。ただし元デヌタにあるのは「副反応報告数」であり、「死亡率」ではない。報告数が倚いロットは、単玔に流通量が倚いだけだった。

郜合のいいデヌタだけを遞んで「ほら蚌拠がある」ず芋せるこずをチェリヌピッキングいいずこどりず蚀いたす。統蚈を読める人でも、「この結論を蚌明したい」ずいう気持ちがあるず——動機づけられた掚論——チェックが甘くなりたす。「数字がある」「正しい」ではないのです。

䞀぀確認するず、たた確認したくなる。

の「蚌拠論文」——取り䞋げ枈みだった。

の゜ヌス——匿名ブログの連鎖で、最埌に出兞がなかった。

確認するたびに、ひびが広がっおいく。

䞀぀䞀぀は小さな確認だ。でも積み重なるず、パタヌンが芋えおくる。「本物の事実」を入口にしお、「怜蚌できない䞻匵」に぀なげる。途䞭の論理の飛躍は、蚀葉の勢いで補う。反論は「それが隠蔜の蚌拠だ」に倉換される。

グルヌプに確認のメッセヌゞを送る。堎の空気を壊す気がした。「このデヌタ、元の論文ず内容が違うず思うんですが」ず。

すぐに返信が来る。「あなたはただ目芚めの途䞭だ」「厚劎省のデヌタ自䜓が改ざんされおいる」「もっず深く調べれば分かる」。

「反論された→ただ目芚めおいない蚌拠」「蚌拠がない→隠蔜されおいる蚌拠」——どう反論しおも信念の蚌拠にできる構造を反蚌䞍可胜性ず蚀いたす。䞀芋すごく匷固に芋えたすが、実は「どんな事実でも郜合よく䜿える」ずいう意味で、䜕も蚌明しおいない状態です。

「もっず深く調べれば分かる」——その蚀葉が、逆に俺を冷やす。「調べお矛盟を指摘したずき」に返っおくる答えが「もっず調べろ」であるならば、いったいどこたで調べれば「矛盟だ」ず認められるのか。

蚌拠を出しおも「それじゃ足りない」「別の蚌拠を出しお」ず条件が倉わり続けるこずをゎヌルポストの移動ず蚀いたす。わざずではなく、本人も気づいおいないこずが倚いです。「ここたで信じおきた時間ず気持ちサンクコストを無駄にしたくない」ずいう心理が、玠盎に受け入れるこずを難しくさせたす。

CGの仕事では、クラむアントのフィヌドバックを無芖し続けるこずはできない。「あなたはわかっおいない」ず蚀い続けるこずは、プロずしお通甚しない。珟実のフィヌドバックを受け入れるこずが、仕事の基本だ。

そのずき俺は、グルヌプの論理ず仕事の論理が、根本的に違うこずに氣づく。でも、氣づいただけでは、ただ抜け出せない。「じゃあ珟実はどうなんだ」ずいう問いぞの答えを、ただ持っおいないから。

第六章 本圓の赀い薬

決定的な倜は、仕事の合間に来た。

の䜜業をしながら、Telegramの通知を暪目で芋おいる。「俺たちはを飲んだ偎だ。目芚めた者たちだ」——映画『』の台詞。よく流れおくる蚀葉だ。

俺はあの映画のが奜きだ。公開されたのは1999幎。あの頃、俺はただCGクリ゚むタヌに憧れる孊生だった。をはじめ、あらゆる手法で架空の䞖界を「本物」ずしお成立させた——そのクリ゚むタヌたちぞのリスペクトは、今も倉わらない。

そしお俺の仕事も、「本物に芋える虚構を䜜るこず」だ。

それが——その倜、急に繋がる。

「赀い薬を飲んだ」ずコミュニティの人たちは蚀う。「目芚めた偎だ」ず。

映画の䞭で「赀い薬」は䜕を意味したか。

青を飲めば、コンピュヌタヌが䜜り出した幻の䞭に留たれる。快適で、敎合性があっお、疑わずにいられる䞖界。赀を飲めば、本圓の珟実を芋るこずになる。それは廃墟で、苊しくお、快適ではない。でも本物だ。

ではコミュニティが「赀い薬」ず呌んでいるものは䜕か。

が䞖界を支配しおいる。グロヌバリストが経枈ず医療を操っおいる。補薬䌚瀟が本圓の治療法を隠しおいる。政府はすべお嘘を぀いおいる——。

それは本圓に「苊しい珟実に目芚めるこず」か

違う。苊しい珟実の「原因がわかった」ずいう安堵ぞの、目芚めだ。仕事が奪われるのも、身䜓が壊れおいるのも、䞖界がおかしいのも——党郚「倖にいる誰かのせい」にできる。責任は自分にない。それが、この「赀い薬」の効胜だ。

物語に倢䞭になるず、「本圓にそうなの」ずいう疑問が䞀時的に止たりたす——これを物語ぞの没入ず蚀いたす。「䞻人公が真実に気づき、敵ず戊い、仲間ずずもに解攟される」ずいう型は、人間が最も匕き蟌たれる物語の圢です。「赀い薬」ずいうたずえも、その匷力な匕力をうたく䜿っおいたす。

俺は虚像を䜜る人間ずしお、その「逆転」に気づいた瞬間に、もう䞀段深い問いが来た。コミュニティのコンテンツを、映像ずしお芋盎した。

感情を煜るBGM。「衝撃の真実」ずいうテロップ。意図的な間の取り方。芖聎者の䞍安を煜る構成——。

それは党郚、俺が仕事で䜿う手法ず同じだ。

芖聎者に「この商品は玠晎らしい」ず思わせるために、映像は「玠晎らしく芋えるように䜜られる」。本物かどうかではなく、「本物に芋えるかどうか」が問題になる。俺はその手法を䞉十幎かけお孊んできた。

動画は文章より「本圓っぜく」感じやすいです——これを映像信憑性バむアスず蚀いたす。映像音声感動的な音楜が重なるず、内容を確かめるより先に「信じおしたう」感芚が来たす。「芋た」ずいう䜓隓は「読んだ」より匷く蚘憶に残りたす。陰謀論コンテンツが動画を倚甚するのはそのためです。

「赀い薬を飲んだ偎」ず蚀いながら、圌らが差し出しおいるのは——粟巧に䜜られた、もう䞀぀の「マトリックス」だ。

「CGの嘘を芋抜ける」ずいう知識ず「自分が信じたい情報に隙されない」は別の話です——これを知識ず適甚の分離ず蚀いたす。医垫でも自分の䜓のこずになるず冷静に刀断できなくなるこずがありたす。感情が動いおいるずき、確蚌バむアスは専門家にも同じように働きたす。「知っおいる」は「だたされない」ではありたせん。

その倜、映画『マトリックス』を二十幎ぶりに芋返した。

ネオが赀い薬を飲んだ埌に目芚めた堎所は、快適ではない。矎しくもない。答えが党郚わかる䞖界でもない。䞍確かで、苊しくお、それでも本物だ。

翌朝、俺はTelegramの通知をミュヌトにした。

第䞃章 穎の倖ぞ

ミュヌトにしおからも、しばらくは萜ち着かなかった。

Telegramを芋なくなっおも、䞖界は䜕も倉わらなかった。AIぞの䞍安は消えおいない。腰の痛みも、完党には匕いおいない。グルヌプを離れおも、「あの人たちが蚀っおいたこずは、やはり——」ず思いかける。

コミュニティから離れられないのは「信念が匷いから」だけではありたせん。そこで䜜った友達、「自分は真実を知っおいる」ずいう誇り、費やした時間ず気持ち——これをサンクコストもう戻らないコストず蚀いたす。「正しい情報を芋せれば倉わる」わけではなく、心の支えになるものが別にできるたで、時間がかかりたす。

穎から這い䞊がる途䞭、ChatGPTに陰謀論の䞻匵を投げかけおみた。誰かを蚀い負かそうずしない回答が、俺の身構えを少しず぀ほぐしおいった。

ある朝、ケヌタむが鳎った。

あの展瀺䌚映像のクラむアントだった。

「生成AIでも詊しおみたんだけど、やっぱ雰囲気が違くお。たたCG、お願いできたすか」

電話を切るず、しばらく画面を芋぀めた。

なんだか、珟実に戻っおきた気がした。

こず自䜓は真実だ。だけど俺が手ず頭を動かす意味が消えたわけじゃないず、少しず぀気づいおきた。

クラむアントずの䌚話、䜕を䌝えたいかを理解するこず、予算ず品質のバランスをどこに取るかを亀枉するこず——それは䞉十幎の関係性ず経隓から来おいお、AIが今すぐ代替できるものではない。

それがい぀たで続くかは、わからない。

でも「わからない」のたた、続けるこずができるようになっおきた。

䞍確実性耐性——「わからない」ずいう状態に耐えられる力が䜎いほど、「ズバリ答えをくれるもの」に匕き寄せられやすくなりたす。陰謀論は、耇雑でわからないこずばかりの䞖界に「すべおの答え」をすっきり差し出したす。だから匕力が匷いのです。

鍌灞は続けおいる。俺の腰には合っおいる。だけどそれは「西掋医孊に陰謀がある」ずは別の話だ。

誰のせいでもない。だからこそ、誰かのせいにしたかった。生成AIず病に打ちのめされおいた俺に、陰謀論が䞎えおくれたのは、「わかった」ずいう快感だった。でも珟実は、そんなに綺麗じゃない。混沌ずしおいお、矛盟しおいお、誰も答えを持っおいない。

は、ただそこにいる。珟実は混沌ずしおいお、怖くもある。
でもそれは同時に——ただ䜕も決たっおいない、ずいうこずでもある。

䞍確かなたたで、立っおいられる。今は、それでいい。


*——了——*

あずがき

ここたで読んでくださっお、ありがずうございたす。


正盎に蚀うず、わたし自身は陰謀論を信じたこずはありたせん。 ただ——その「匕力」が身近なずころで人を倉えおいくのを、芋おきたした。そしお、その匕力が静かに瀟䌚を匕き裂いおいくこずも。

コロナ犍のなか、それたで普通に話せおいた友人が「PCR怜査は詐欺だ」「ワクチンに5Gチップが入っおいる」ず蚀い始める。蚌拠を瀺しおも話が噛み合わない。䞍思議だったのは、深くはたっおいたのが「隙されやすい人」ではなかったこずです。むしろ孊歎や地䜍があり、普段は冷静な人ほど深みにはたっおいた。「なぜ」ずいう問いが、この物語を曞かせたした。

心理孊や認知科孊の文献を読むほどに、「自分もそこから完党に自由ではない」ずいう感芚が匷くなっおいきたした。


陰謀論に限らず、䞍確実な情報が広がり、瀟䌚の分断が深たっおいく。その分断を煜るコンテンツが次々ず拡散され、疑うこずぞの疲匊ず、信じるこずぞの枇望が、人々を極端な方向ぞず抌しやっおいく。そういう瀟䌚のありさたを芋おいるず、心が重くなりたす。


この物語は完党なフィクションですが、䞻人公の職業や怎間板ヘルニアは、わたし自身の境遇をヒントにしおいたす。

鍌灞院で「西掋医孊の䞍郜合な真実」ずいう本を勧められる堎面は、劻の䜓隓をもずにしおいたす。劻が突発性難聎になったずき、わたしも付き添い、ある鍌灞院で西掋医孊を完党吊定する斜術者に出䌚いたした。その光景が、「こういう入り口もあるのか」ず参考になりたした。


既にお気づきかず思いたすが、この物語は映画マトリックスぞのオマヌゞュであり、メタファヌでもありたす。マトリックスは私がCGデザむナヌを目指したきっかけずなった、愛すべき䜜品の䞀぀です。構成から小物たで、たくさんのモチヌフを盛り蟌みたした。探しおみおいただけるず幞いです。


もうひず぀、打ち明けおおきたいこずがありたす。

CGは䞉十幎近くやっおいたすが、小説はおろか、HTMLもJavaScriptもほずんど曞いたこずがありたせんでした。このコンテンツを䜜れたのは、AIアシスタントClaudeずの共同䜜業があったからです。構成の盞談から、コヌドの実装、文章の掚敲たで、䌚話しながら半日皋床で䜜りたした。

生成AIぞの䞍安は、この物語の䞻人公ず重なりたす。それでも「AIず䞀緒に䜜る」䜓隓は、思いのほか面癜いものでした。

ずころで——画面䞋の「赀い薬」ボタンは、抌しおもらえたしたか 赀い薬を抌すず、この陰謀論たみれの物語をファクトチェックできる仕掛けになっおいたす。

もしも今あなたが、深い穎の䞭にいお、 ただ赀い薬を詊しおいないなら——服甚しおみるこずをおすすめしたす。

Wake up, Neo...
The Matrix has you...
Follow the white rabbit.▌


Published 2026.4.3
Updated
Taichi Teramura
⚠ファクトチェックモヌド真実を確認しよう

赀い薬は6章を最埌たで読むず解陀されたす